痛みは古今東西を問わず健康上の切実な問題である.痛みを治療することは古くから医学・医療の重要な課題であり,現在も「痛みの無い」状態を目指して,研究と実践の努力が続けられている.
ここ数十年,近代科学の発展とともに西洋医学は飛躍的に進歩し深化した.痛みの治療もより精密に,効果的になされるようになってきたと言えるだろう.しかし,果たして「痛み」は解決されているだろうか.
西洋医学的なアプローチで解消される痛みが果たしてどれくらいあるだろう.特に慢性化した痛みに対して,我々医師はどれくらい有効な手段を持っているだろうか.もし,西洋医学的な考え方と知識と技術ですべての「痛み」が解決するのならば,「どこに行っても治らない」痛みの患者が決して少なくない事実をどう説明するのか.
現在の西洋医学による痛みの治療には限界があるのである.この事実を我々医療者は虚心坦懐に受け入れ,痛みの患者を治療する術を西洋医学の他に求めなければならない.
漢方医学はその求めるべきもののひとつであると私は確信している.科学という観点から見る時,漢方医学は基づくべき実験的事実が無く,曖昧で,今流行のEBMなどとはおよそ隔絶した信頼性に乏しい古色然とした代物かもしれない.しかし,その治療的威力は最近ますますはっきりと認識され,ときに西洋薬を凌ぐほどの効果を持つことが確認されてきた.
今日,治療医学としての漢方医学の方法を体得することは,「痛みの患者」に相対する治療者にとって必須のこととさえ言えるだろう.
本会は実践的な「痛みの漢方治療」を学び,研究し,日々の臨床に生かすべく互いに切磋琢磨することを目的として設立する.痛みを持つ患者に対して,効果的な治療者として向かい合う志を持つ諸氏の参加を切に希望するものである.
九州・沖縄・山口 痛みと漢方を学ぶ会
会長 平田道彦